2013年02月13日

日本人のための憲法原論 小室直樹(6)

小室先生の「日本人のための憲法原論」の6回目です。
今回の第6章のタイトルは「はじめに契約ありき」です。

前回の最後の方でもふれましたが、日本人が民主主義や資本主義を理解するためには「契約」ということをきちんと理解しなければならないと小室先生はおっしゃいます。
今回はその契約に関連して、社会契約説で有名な「18世紀を支配した男」ジョン・ロックのお話です。

過去の記事はこちらのタグを参照ください。

日本人のための憲法原論

新品価格
¥1,890から
(2012/12/28 15:44時点)



概要
第6章 はじめに契約ありき
レボリューションと革命の違い
・いわゆる革命思想の原点が、キリスト教の予定説にあったという話を前回の講義でしました。
→予定説を信じれば世の中のシステムなどを覆してもかまわないと考えるようになる。

・しかし、そうやって社会体制をひっくり返すのはいいとしても、問題はそのあとです。以前とは違う社会を作ってこそ、本当のレボリューションです。
→この点において、革命とレボリューションは違います。
・英語のレボリューションは漢字に直すと「革命」ですが、中国史における「易姓革命」では王朝交替が起きても変わるのは、文字通り、皇帝の姓だけです。
・近代ヨーロッパにおけるレボリューションは違います。レボリューションとは旧体制の否定を意味します。
→同じ革命でも、中国とヨーロッパではまったく中身が異なるというわけです。

・では、中世の伝統的社会をひっくり返したヨーロッパの人たちは革命のあとに、どんな社会を次に作ろうとしたのか。
→そこで大きな影響を与えたのが、ジョン・ロックの「社会契約説」でした。

18世紀を支配した男
・ジョン・ロックは1632年、イギリスに生まれます。彼が10歳のころ、ピューリタン革命が始まるわけですから、まさにロックの人生は革命とともにあったと言っても過言ではありません。

・このような激動の中、若きジョン・ロックはオックスフォードのクライスト・チャーチで哲学と医学を学びます。
・ロックについては、丸山眞男教授は「17世紀に身を置きながら18世紀を支配した思想家」と行っています。
→18世紀最大の事件はアメリカ合衆国の独立とフランス革命ですが、実はその二つの出来事はロックの思想なくして起こり得なかった。

・ではロックの思想がなぜ、かくも巨大な影響を与えたのか。その理由はいろいろあるけれども、オックスフォード時代にロックが自然価格に興味をもっていたという事実は、けっして見落とすことはできません。

・というのも彼のしそうは非常に科学的なのです。

「自然人」と「自然状態」
・では、彼の思想のどこが「科学的」であったか。
→それは彼が、人間や社会を抽象化して考えたことにあります。

・彼は議論をシンプルにするため。違いを一切無視することにした。
→編集者:それはチト乱暴ではないですか。
→確かに、現実の社会を分析するのであれば、ディテールを無視することはできません。しかし、そこで彼はこう考えた。
・国家や社会ができる前の人間はどのような暮らしをしていたのだろう。おそらく、そこに生きていた人たちは、みな同じようなものだったに違いない。みなが平等であったのではないだろうか。

・さらに言えば、そこに暮らしていた人たちはみんな自由であったはずです。
→というのも、人間が不自由なのは、社会のシステムが出来上がって、いろいろな決まりや伝統に縛られているからです。
・自由で平等な人間のことを「自然人」と呼びました。
・さらにロックは、この自然人が生きている状況のことを「自然状態」と呼びました。自然状態とは、国家も社会も存在しない世界のことをさします。

・ロックは自然状態に暮らしている自然人たちが、なぜ今のような国家や社会をつくることにしたのか、その理由を考えようとしたのです。

・自然人や自然状態なんて単なる空想だと切って捨ててしまえば、それまでです。もちろんそんなことは彼だってわかっていました。
→しかし、それではいつまでたっても「社会とは何か」「国家とは何か」という一般的な議論にならない。

社会科学の始まり
・ロックのこうした発送の原点となったのは、彼が青年時代にあった自然科学でした。
→数学や物理学では、あらゆる現象を抽象化して考えます。

・ロックの自然人という概念は、幾何学における点や線の概念と共通しています。
・それと同様に、ロックは法もなければ、政治権力もない社会を想定しました。これが自然状態です。

なぜ経済学は科学になったのか
・ちなみに、こうしたロックのアプローチを引き継いでいるのが経済学です。たとえば、自然競争という概念もその一つです。

・こうした、理論研究の先駆けを作ったのが、ほかでもないジョン・ロックです。だからロックは政治学の父であると同時に、経済学の祖父であるということができます。

王はアダムの子孫である!?
・さて自然人と自然状態を考えたロックは、そこから何を導き出したか。それがいわゆる「社会契約説」という考えです。

・自然状態に置かれた自然人は、最初、社会など持たずに暮らしていた。ところが、時代を経るにしたがって、国家や社会の必要性を感じるようになった。そこで平等な人間同士が契約を結んで、政治権力を作るようになた・・・つまり、国家は人間相互の契約でつくられたというのが、社会契約説です。

・現実の歴史において、最初の国家がどのようにして生まれたのかは記録がないのですから、誰にもわかりません。
→そこでロックは自然人と自然状態という二つを仮定することによって「人間というのは、ほっておいても、じきに契約を交わして社会を作るようになるのだ」ということを理論的に証明したいというわけです。

・ロックが「統治二論」を書いたのはイギリスがふたたび王政にもどっていった時期に当たるのです。
→当時のイギリス人のなかにも「やはりフランスのように王様が絶対権力をもっている方がいい」と考える人がたくさんいました。
→中には、「国王はアダム直系の子孫であり、神から統治者としての権利を与えられている。したがって王に逆らうのは神に逆らうことだ」と言う人さえいました。いわゆる王権神授説という考えです。

革命の哲学
・ロックが「統治二論」を書いたのはこうした王党派の人たちに反論するためでもありました。

・そもそもロックの考えによれば、王がえらいのは神様に選ばれたからではありません。人民が契約によって国家をつくったときに、その権力を王様に預けただけにすぎないのです。
→王様が勝手なことをしないように、人民の代表者が集まる議会が国王の権力乱用を戒める必要がある。これこそロックの言いたかったことです。
→この考えはまさしく現在の憲法や民主主義の思想につながるものです。
→ですから、ロックの登場によって初めてヨーロッパの人は「民主主義の哲学」を持ったと言っても過言ではありません。

・ロックは同時に「革命の哲学」をも作り上げました。
→いかに議会が国王の権力を縛りあげようとも、それがうまくいかないことがあるかもしれない。
→ロックはそこで「抵抗権」と「革命権」という考えを出しています。
・つまり、国家権力が暴走した際には、一人一人の人間はそれに抵抗することができる。しかし、それでもなお横暴を続けるのであれば、革命をおこしてもいい。

・ロックにとって革命権とは「伝家の宝刀」です。しょっちゅう持ち出すことはありえないが、国民の側に革命権があるとおもえば、国家もおのずから横暴を控えるという効果もあるわけです。

ロックの論敵はホッブスだった
・同時代のイギリスに「国家の主権は絶対的な権力をもっている」と考える思想家がいた。その人物によれば、何が正義あるかを決められるものも国家の主権者だけであるというのです。
→編集者:誰ですか、そんなけしからんことを言う奴は。
→あなたもご存知の人ですよ。かの「リヴァイアサン」を表したホッブスです。

・ホッブスはたしかに国家をリヴァイアサンと呼びました。しかし彼が言ったのは「本来、国家権力は怪獣のように強くなくてはならない」ということなのです。
→ところが、このホッブスこそが実は社会契約説の元祖開山なのです。

・編集者:人民が作った国家が、なぜ人民を苦しめていいと言うんですか。
→ホッブスがなぜ、このようなことを考えるに至ったか。それを知れば、ロックの思想もより深く理解できます。

人間は人間に対しての狼である
・ホッブズの考える自然状態に生きている人間は、知性以外は動物と変わりません。こうした、人間にとって、最大の関心事は食べ物の確保です。
→人間の場合、やっかいなのは動物と違って、知性、とくに予見能力を持っている点です。なまじ知恵があるものだから、「今日は食えても明日は食えないかもしれない」と心配になる。そこで、今日食べる分だけでなく、明日の分、あさっての文、まで手に入れようと考える。つまり欲望は無限に膨らむ。
→そんなことを皆が考えるようになったらどうなるか。言うまでもありません、その結果は絶え間無い競争であり闘争です。

・このことを彼は「万人の万人に対する戦い」「人間は人間に対して狼である」と表現しています。
→したがって、人々は「孤独、貧困、不快、殺伐そして短命」という人生を送ることになると彼はいいます。

ビヒーモス対リヴァイアサン
・こうした闘争の連続を収めるには、みんながルールを決めて仲良く暮らしていこうと決めるしかないわけですが、そんなこと決めたところでみんなが約束を守るとは限らない。
→ではいったいどうすればよいか。それには「力」が必要であるということです。
→社会を維持しようと思ったら、契約だけでなく、同時にパワーも必要であるというのがホッブスの考えです。
→だから彼は「国家がリヴァイアサンになるのも、やむをえない」と考えた。

・ホッブスは「内乱とはビヒーモスである」といいます。
→ビヒーモスもまた、恐るべき怪獣で、そのちからの前に敵はいません。

・ホッブスは「文明破壊のビヒーモスを止めることができるのは、リヴァイアサンしかいない」と考えました。
→編集者:怪獣キングギドラを倒せるのはゴジラだけ、という話ですね。ゴジラとキングギドラは両方とも怖いけれどもどちらかを選べといわれているようなものだ。

・彼にとっての権力とは「必要悪」なのです。

土地フェティシズムとは
・では、いったいロックの社会契約説は、ホッブスとはどこがちがうのか。

・確かに、ホッブスの言うとおり、人間には動物と違って、知恵がある。ケダモノのように刹那的に生きるのではなく、未来のことを考えて行動する。
→しかし、ロックの考えた自然人は、そこで他人を蹴落としてまで食物をうばおうとしません。「人間の知恵はもっと建設的なものだ」とロックはいうのです。

・では、一体ロックの自然人は、そこでどうするか。
→働くのです。
→自然の恵みに頼っているだけでは、確かに食物は有限です。しかし、そこで知恵を使い、体を動かして働けば、食べ物はもっと増える。

・編集者:いわれてみれば「なーんだ」という話ですね。
→編集者君は現代人だから、ロックの考えを聞いてもことさら驚かないのです。しかし、彼の考えは、当時としてはとてつもなく画期的だった。

・労働によって富は無限に増やすことができるという考えは、ロックが現れるまでには存在しなかった。その最たる例は土地です。
→だから、いつも中世ヨーロッパでは限られた土地をめぐり争いがけっしておさまらなかった。ホッブスのいったような闘争状態が続いていたのです。
→中世とは、いわば「土地フェティシズム」の時代であったわけです。

なぜ信長は茶の湯を奨励したのか
・土地フェティシズムは何もヨーロッパに限ったことではありません。これは日本の戦国時代でも同じです。
→そのことを見抜いていたのが織田信長です。
→信長はやはり天才ですから、戦国時代が続くのは、ミンンが土地にこだわっているからだという事実がはっきりわかっていた。

・彼が、楽市楽座で商業を盛んにしようとしたのも、要するに土地中心の経済から商品経済への以降を目指したからです。
・彼が部下に茶の湯を奨励したのも、その一つです。
→編集者:お茶をのんで心を落ち着けろということですか。
→お茶で土地フェティシズムがなくなるんだったら、信長も苦労しません。

・彼は無骨な部下たちをしょっちゅう茶会によんで、茶道は素晴らしいものだと洗脳する。こうした下準備をしておいてから、信長は武功のあった武将たちをよんで、褒美として茶器を与える。すると、武将たちも、これは土地に換算したら何万石分にもなるものだと思って感謝感激する。
→しかし、本当は元手は対したものではない。

・戦国時代の常識では大名は部下に褒美として土地を与えることになっていた。
→しかし、これを続けていたのでは、土地フェティシズムは亡くならない。そこで、土地以外の恩賞でも満足するように、彼らの頭を変えようとしたのです。

私有財産はなぜ神聖なのか
・ロックのころになると、イギリスでもだんだん資本主義が芽生え出してきました。土地にこだわって農業にしがみついていなくても、商売やモノづくりで利潤を上げていけばいいという考えが生まれました。

・予定説を信じる人たちがはたらくのは、何もカネのためではありません。神様が、自分の仕事を転職として与えてくださったから、一所懸命にはたらく。労働は神様が定めたことだから正しいというわけです。
→ところが、ロックは違います。

・ロックの場合には、労働そのものに意味があるのです。
→人間が知恵を使って働けば、地球上の資源を増やすことにつながる。だから、働くことは社会全体のためになる・・・これがロックの考えです。
→この大発見によって、近代資本主義はようやく理論的根拠を得たと言っても過言ではありません。

・さらに、彼は私有財産の正当性をも基礎づけました。
→個人の私有財産というのは、労働の結果、新たに生み出された資源です。おの人の持っている私有財産は労働に対する正当な報酬なのだから、それをどれだけ貯めようと、どんな使い方をしようと、誰にも文句を言われる筋合いはない。

・さらにロックの考えによれば、私有財産は政治権力が作られる前からあったことになる。つまり、私有財産のほうが権力よりも由緒が正しいのだから、権力といえども個人の私有財産に干渉してはいけないという考えも同時に生まれてくる。

・私有財産の概念もまた、ロックが最初に考えたことであり、近代資本主義を成立させるためには不可欠な思想です。

人民の、人民による、人民のための政府
・さて、ロックの言う自然状態の人間に話を戻しましょう。

・ロックの考えによれば、自然状態において人間はせっせと働き、富をふやして平和に暮らしていくことができる。となると、政治権力なんて必要ないように思えるかもしれません。
→しかし、現実には全員が全員、働き者であるとは限りません。
→ロックにとって、貧乏人とは要するに怠け者のことであり、自然状態の調和を乱す人たちです。
・この人たちは自分ではロクに働きもしないのに、他人が私有財産をもっているのがうらやましくてしょうがない。だから、泥棒や他人を殺して財産を奪うなどといった事件が起きてくる。ロックは、そう考えます。

・こうしたトラブルが起きてくると、やはり自然状態のままでは何かと不便です。争いごとを仲裁してくれる権威ある存在がなければ、いつまでたっても問題は解決できません。そこでみんなが集まって契約を結び、政治社会、あるいは国家をつくることになった。
→これがロックの考える「社会契約説」です。

・ロックの考える政治システムとは、要するにトラブルの仲裁機関であり、調停役です。
・ロックにとっては、あくまでの国家の主人公は人民であり、国家とは人民にサービスするためのものなのです。

契約は守られるのか
・同じ社会契約説でも、ロックとホッブスは180度違うわけですが、なぜ同じような考えにたちながら、全然ことなる結論が出てくるのでしょう。

・その第Tの理由は、すでに述べた通り、ホッブスは富が有限であると考えたのに対して、ロックは富を労働によって無限に増やすことができると考えた点にあります。

・自然状態がどうあれいずれにせよ社会契約を交わして国家をつくるという点では両者は一致している。ところがそこから先が二人の考えが決定的に違ってきます。

・ホッブスの場合、その社会契約は役に立たない。人間は自分に都合がわるくなれば、契約なんて無視するに違いない。
→だから、無理やりにでも秩序を押し付ける「力」がなければならないとホッブスは考えます。

・これに対してロックは「契約は守られる」と考えます。交わした約束をきちんと守るだけの分別を人間は持っているというのがロックの立場です。
→編集者:言っちゃ悪いが、これはホッブスのほうに分がありますね。ロック先生のは理想論ですよ。
→しかし、そののちの歴史をみると、ホッブスを信じるよりも、ロックを信じるほうが圧倒的に多かった。

代表なくして課税なし
・その何よりの証拠が、アメリカの独立です。
・アメリカの植民者たちが宗主国イギリスからの独立を目指して、いわゆる独立戦争を起こした理論的根拠となったのが、このロックでした。

・そもそも日本の教科書などでは「アメリカ人が独立戦争を始めたのは、イギリスがアメリカ人がの無茶に対して、不当に高い税金をかけたからだ」などと記しています。いわゆるボストン茶会事件が独立の引き金になったというわけですが、それは大変な間違いです。
→というのも、まず第一にアメリカの植民地人たちが革命を考え始めたのは、ボストン茶会事件が起こる8年も前の1765年のこと。このとき、イギリスの議会で「印紙税法」なる法律が可決されました。

・イギリスの憲法には「代表なくして課税なし」という大原則があります。王が領主に税金をかけるために領主の代表を呼び、商人に税金をかけるために商人の代表をよぶ。これが中世における議会の始まりです。

・この大原則を理論化したのが、ほかならぬロックです。
→ロックによれば国家権力というのは人民の契約によって成り立っています。みんなが作った国家を運営する費用として、それぞれが負担する割当金が税金であるという考えです。
→だから、税金をかける際には、国家が勝手に決めてはいけない。

ロックが起こした革命
・しかるに、印紙税はアメリカの植民地人だけを対象にする税金でありながら、そのアメリカ植民地の代表から承諾を得ていません。

・ところが、当時のイギリス政府の首相であったノース卿は、植民地側の論理がわからなかった。そこで、この印紙税法の実施を強行した。
→これを見た植民者たちの頭によぎったのは、何か。
→それが、ロックのいっていた「抵抗権」というアイデアです。

・つまり、アメリカ独立戦争とは、ロックの思想なくしては怒らなかった革命であったというわけです。

なぜ、アメリカ人は銃を捨てないか
・イギリスとアメリカ植民地との戦いは、当初、圧倒的にイギリスが優位でした。
・ところが、思想の力はおそるべきもの。フランスが植民地の味方をしたことも大きかったのですが、ロックの革命思想に鼓舞された植民地人はけっして諦めなかった。

・ロックが最初に社会契約説を発表した時には、「社会契約で作られた国はどこにも存在しない」という批判が多かった。
→ロックの説はあくまでも仮説、理論であって、実証に基づいたものではありません。
→ところが、ロックが「統治二論」を書いた100年後、彼の社会契約説は仮説ではなくなった。1776年、アメリカ合衆国が誕生したからです。

・アメリカ独立宣言には、人民の権利を政府が侵害した場合には「人民はそれを改廃する」こともできるし、また「新たな政府をつくる権利」をもっているとも謳われています。

・なぜ、アメリカ人が銃を規制しないかといえば、これはロックの説が染み付いているからです。ロックによれば、人間が自分を守ろうとする権利は、国家が作られる前からあった「自然権」です。

・アメリカ合衆国においてロックの影響は大きかった。合衆国憲法は世界最初の成文憲法ですが、それは同時に「ジョン・ロックの憲法」でもあったというわけなのです。

なぜ、アメリカ人はロックを信じたのか
・大切なのは、なぜアメリカ人たちは社会契約説を本気で信じたのかという問題です。
→このことが分からなければ、本当に理解したとは言えません。

・ところが、日本の憲法学者でもそれを本当にわかっている人がどれくらいいることやら。何しろ日本の憲法学者くらい不勉強な人たちはおりません。
→編集者:憲法学者からクレームが来てもしりませんよ。
→そんな連中のことなど、放っておけばよろしい。

・現代日本をご覧なさい。まさに国家権力は巨大化して、リヴァイアサンのごときではないですか。
→こんな状況に置かれたら、18世紀のアメリカ人なら間違いなく、抵抗権を発動するに決まってます。

日本国憲法も社会契約説だ
・なぜ、日本の国家権力はこうやってリヴァイアサンになってしまったのか。
→その理由は、いろいろあるけれども、最も致命的な点は、日本人が社会契約の意味を理解していないところにあります。
→だから、国家がリヴァイアサンになっても、抵抗運動など絶対に起きない。

・もちろん、今や21世紀ですから17世紀の社会契約説をそのまま適用するわけにはいきません。しかし、ロックの思想は脈々と民主主義の中に生きています。
→何よりの証拠に、日本国憲法前文を読んでご覧なさい。
→「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」
→編集者:なんと、これはロックそのものですね。

・言うまでもなく、日本の憲法学者の圧倒的多数は憲法護持派です。もし「日本国憲法は絶対にまもるべきである」と信じるなら、この前文の精神を具現して、竹槍を担いで今すぐ国会に殴り込みに行ってもおかしくはない。

公約違反は民主主義の敵
・結局のところ、日本においては憲法の専門家ですら、社会毛薬とは要するに建前であると考えています。
→ましてや政治家で、日本国の政治が社会契約で成り立っていると信じている人は誰もいない。

・その象徴的な例が、消費税3%から5%に上がった時の経緯です。
→旧社会党は護憲を党是として、消費税にも絶対反対だった。ところが、いざその社会党の党首が総理大臣になったら、公約をあっさりひっくり返して、消費税を廃止するどころか、上げてしまった。

・公約とは選挙民と議員との約束、つまり契約です。それを変えるのであれば、いったん野に下って、新しい公約を選挙民に等のが民主主義の常道です。

・選挙の公約という大切な契約でさえ、政治家自らが破って平然としているのが日本です。これでは社会契約なんてだれも本気で信じてなくても不思議はありません。
→編集者:しかし、先生、アメリカの政治家はちゃんと公約を守るんですか?いくらなんでも、現実に応じて変えざるを得ないことだってあるでしょう。
→欧米の政治家、とくにイギリスやアメリカの政治家にとって、公約は命よりも大切です。公約を覆すというのは、政治的に自殺をするようなもの。

大きな流れ
ジョンロックは自然科学に影響を受けながら、一種の理想状態である「自然人」や「自然状態」という仮定から国家、社会を捉えようとした。
ロックの思想は王権神授説に反論するためのものでもあり、ヨーロッパにおける「民主主義の哲学」の表れでもあった。彼の思想は「土地フェティシズム」の時代にあった中世においては画期的なものであり、その影響の大きさはアメリカの独立に見ることができる。

論点
ロックの思想がいかに画期的なものであったかを土地フェティシズムをつかって論証するのはわかりやすい解説ですね。
途中、丸山眞男教授に関して触れていましたが本文中の注釈によると
「丸山眞男(1914-96) 政治学者、思想史家。終戦直後に発表した、戦前日本のファシズム分析で一躍有名になる。日本近世および近代の政治思想研究を中心に幅広い業績を残す一方、東大法学部で長く教鞭を執り、多くの弟子を育てた。」
方だそうです。彼の「日本の思想」は一読の価値があります。ぜひ読んでみてください。
ロックの理想論
小室先生の「交わした約束を守るだけの分別を人間は持っているというのがロックの立場です」に関して、編集者の方が、「ロック先生のは理想論ですよ」と言う場面があります。
労働によって富が無限に生まれるという点に関しては資本主義の芽生えによる影響があることを指摘していますが、上の理想論に関してはどのようにしてそのようなしそうに至ったのか触れておりません。
ホッブスが、「人間は簡単に契約をやぶる」と考えたのに対し、ロックが人間の理性を信用したのはどのような影響があったのでしょうか。あるいはその根拠となるのはどのような観察、思考からなのでしょうか。


日本の思想 (岩波新書)

新品価格
¥735から
(2013/2/14 10:16時点)






posted by きょうよくん at 20:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/322175890
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。