2013年02月02日

国際法 松井芳朗(1)

お知らせで述べたように、出張中の特別版で国際法の本を取り上げさせていただきます。
著者は松井芳朗、佐分晴夫、坂元茂樹、小畑郁、松田竹男、田中則夫、岡田泉、薬師寺公夫氏らの共同著書ですが、タイトルでは松井芳朗氏の名前だけ記述させていただきます。

本書は有斐閣の法律に関する定番の有斐閣Sシリーズの一つで国際法に関するものです。
標準的なテキストとして定評のある本で、基本的なことから多少細かいところまでまとめつつ、コンパクトな仕上がりになっています。国際法を最初に取り上げるにはよい本だと思います。

今回は、2007年の第五版を元にまとめますので、少し古い記述もあるかとおもいますがご了承ください。

国際法 第5版 (有斐閣Sシリーズ)

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概要
第T部 国際法とは何か
第1章 国際法の概念
1 序説
・現在ほど、世界の国々と地球上の人々が緊密な諸関係の網の目に結び合わされた時代はかつてなかった。
→1980年代の「国際化」にかわって、1990年代以降は「グローバリゼーション」がジャーナリズムだけでなく、社会科学の諸分野においても流行語となっている。

・国と国との付き合いや国境を超えた個人、企業、団体などの交流が円滑に行われるためには、一定のルール、つまり社会規範が必要となる。
→国際社会において働く社会規範には、国際政治上のルール、国際道義の規範、国際礼譲などさまざまなものがあるが、そのうちで一般に法規範とみなされているものは、各国の国内法と国際法とに大別される。

・諸国と諸国民の交流が円滑に進むように保証する。これが国際法の第1の、そして伝統的な役割である。

・諸国の共通の目的を実現し全地球的な問題を解決するための法的な仕組みを設けるとりう、第2の役割が重要性を増している。

・伝統的国際法の時期には、国際法の役割はほとんどもっぱら第1のものに限られていた。
→ところが、国際法の第2の役割が重要性を増している現代国際法にあっては、国家はなお中心的な国際法主体ではあるが、国際関係に実質的な影響を与える行為体は多様化し、これらにも限定的ながら国際法主体性が認められるようになっている。

2 国際法の歴史
(1)国際法の成立
・国際法の起源を遠く古代奴隷制の時代に、あるいは中世封建制の時期に求める見解がないわけではない。
→これらの規範は個別的・断片的であって一つの法体系を構成するものではなく、また、当時の国家と国際関係の構造は今日のそれらと連続性をもつものではなかったからである。

・国際法形成の基盤は、中世ヨーロッパにおけるローマ教皇と神聖ローマ皇帝とを頂点とした理念の上での普遍的秩序と、現実における封建的割拠とを止揚した、領域主権国家の成立によって与えられた。

・内においては絶対・最高の権力を、外に対しては独立・平等を意味する主権をもった、近代的な領域国家をうみだしていったのである。

・経済発展が進み、国家を超えた人間、商品および資本の移動を可能とするためには、最低限の秩序、予測可能性および安定が要求され、この目的のためにすべての国が通常は従うような公的な規範、つまり国際法が必要とされた。
→しかし当時においては、条約や慣習法の形をとる実定国際法はまだ十分に成熟していなかったから、ヨーロッパ諸国にとっては共通の伝統であったキリスト教的自然法思想と、これを体現すると考えられたローマ法が、国際法形成の素材となった。

・自然法ないしローマ法の国際法への導入にあたっては、スペインのヴィトリア、英国で活躍したイタリアのゲンティリス、「国際法の父」と呼ばれたオランダのグロティウスといった神学者や法学者たちが、大きな役割をはたした。

(2)伝統的国際法の構造
・伝統的国際法の生誕を示すのはヨーロッパにおける近代国家系の基礎をすえた1648年のウェストファリア講和条約だとされる。
・その後、条約や国家の慣行に基礎をおく、実定国際法が確立していく。学説の上でも実証杉が有力となっていく。
・19世紀半ばは、伝統的国際法の一応の完成の時期であり、また、法実証主義の勝利の時期でもあった。

・伝統的国際法は、法と行政の制度を備えたヨーロッパがたの先進国、つまり当時のいわゆる「文明国」だけを一人前の国際法主体として認め、したがってしばしば「ヨーロッパ公法」と呼ばれていた。

・非ヨーロッパ世界秩序に属する諸国はm資本主義経済の円滑な展開を保証する法制度を備えていなかったから、世界市場の確立をめざすヨーロッパ先進国は、非ヨーロッパ世界秩序の打破に向かうことになる。
→相当の社会的発展をとげてながらヨーロッパ型の法制度を持つに至っていなかった19世紀のオスマン・トルコ、中国、日本などは領事裁判制度を軸とする不平等条約によって、いわば半人前の主体として国際社会に従属的に編入された。

・住民が住んでおり独自の国家形成をとげながら、それほどの発展段階にも達していなかったアフリカを中心とそる広大な地域は、国際法の客体に過ぎず、「無主地」として先占による先進国の植民地支配の対象とされた。

・さらに、当時の先進国は原料や市場を求める闘争において、また、不均等発展による力関係の変化に応じた植民地や勢力圏の再分割のために、戦争を不可欠の生存条件としていた。
→したがって、戦争に訴えることは主権の最も重要な属性とみなされ、伝統的国際法はこれを規制することはできずに、発生した戦争における国の行為を規制するという限られた役割に甘んじなければならなかった。

・伝統的国際法は平時法と戦時法からなる二元構造を有していた。

・伝統的国際法では戦争に訴えることが規制されていなかっただけでなく、人道的干渉などを理由とする武力行使がしばしば合法的だと主張された。

(3)現代国際法の形成
・伝統的国際法のこのようなあり方に対しては、すでに19世紀の末頃から中小国や先進国ないの平和運動、労働運動などによる批判が行われていた。

・1917年のロシア革命によるソ連の誕生は伝統的国際法にならってきた諸国とは異質の国の誕生を意味した。
→戦後のアジア・アフリカにおける新独立国の国際社会への参加は、国際法の民主的な変革を要求した。

・こうした国際社会の構造変化に対応して、伝統的国際法は現代国際法へとを遂げてきた。国際法の構造転換は次の二点を基軸として行われたと理解される。

・第一に、国際法主体に対して言えば、現代国際法は植民地支配を違法化し、すべての国の平等な国際法主体性を承認する。

・第二に国際法の規範構造に即して言えば、現代国際方は平時法にいわば一元化されているが、この転換は国連憲章において結実する。

・なおもう一つ注目したいのは、伝統的国際法がもっぱら国の個別的な利益を守ったのに対して、現代国際法では、国際社会の一般的利益の観念が確立した事実である。
→その結果、伝統的国際法における国の権利義務が相互主義的・互換的であったのにたいして、現代国際法では対世的な義務の重要性が強調されるようになった。

(4)グローバリゼーションの国際法への影響
・情報技術の革新とあいまって国境の垣根は低められ、人間、商品、資本および情報はかつてなかったほど自由に移動するようになった。
→このようなグローバリゼーションの国際法への影響については次のような現象が指摘できると思われる。

・第1に自決権は個人の権利としての性格を強めている。

・第2に一部の先進国が国連憲章に定める手続きを踏むことなしく一方的に行う武力行使が目立ってきている。

・第3にかつては一定程度民主化されてきた国際法の立法過程を先進国が再び寡占化しつつある。

・このような放言しょうは、現代国際法に全面的な変質をもたらしているとは言えない。国家が国際社会の主要な行為体である事実に変化はなく、また、自決権と武力行使禁止原則という、現代国際法を支える二つの支柱ともいうべき国際法の基本原則の存在自体争う者もない。

(5)日本の国際社会への参加
・1854年日米和親条約によって開国、58年日米修好通商条約によって欧米先進国と通商関係に入る。

・これらの諸条約は不平等条約であり日本の一人前の国際法主体性をみとめていなかった。
→高まりつつあった民族意識は、領事裁判制のもとでの外国人の横暴をしだいにたえがたいものと感じるようになり、不平等条約の改正は明治前期の日本の最大の外交課題となった。

・自由民権運動では、民権の確立とアジアの被抑圧民族との連帯をつうじて、不平等条約をもたらした伝統的国際法の変革を追求するべきことが主張された。
→しかし、明治政府が現実に選択したのは、伝統的国際法のもとで日本が一人前の国際法主体性を確立する政策であった。

・憲法制定や帝国議会開設、法典編纂の進展などを背景に、日英通商航海条約をかわきりとして平等条約の締結に成功し、それによって日本の一人前の国際法主体性、つまり国際社会への完全な加入が実現する。
・日本の欧米との平等な国際法主体性の実現は、アジア諸国との不平等な関係の確立と一体のものだったのである。

大きな流れ
全地球的な問題を解決するという国際法の役割が重要になってきている。
歴史を振り返ると、国際法の基盤は領域主権国家の成立によって与えられ、また、ローマ法が国際法形成の素材となった。伝統的国際法の生誕を示すのはウェストファリア講和条約だとされる。
伝統的国際法は、「文明国」だけを一人前の国際法主体と認め、平時法と戦時法からなる二元的構造を有していた。
第二次世界大戦後の社会情勢の変化により、現代国際法へと構造転換をとごてきた。現代国際法は一元的な構造をもち、また国際社会の一般的利益という観念も考慮される。
グローバリゼーションの時代に入り、先進国による国際法の立法課程の寡占化が目立つ。
日本にとっては、明治期の国際法主体性の獲得は、アジア諸国との不平等な関係の確立と一体のものであった。

論点
国際法の歴史的な推移の話でした。大戦以前では、国際法は欧米先進国のものという側面が強かったのが、だんだんと構造を変えていき、世界を視野にいれて発展してきたということでしょう。
グローバリゼーションが国際法に与えた影響は飛ばし気味に抜き出しましたが、気になる方は本をよんで見てください。
西欧的価値観への再帰
国際法の歴史の最後(日本に関する箇所の前)の部分で、国際法の立法過程が先進国の巨大な交渉力によって寡占化されつつあると述べています。これは、大変不安なことで、例えば、人権という言葉を盾に先進国が利権を求めて武力介入を可とするなどという事態も出てくるかもしれません。
しかしながら、人類普遍的な価値などあってもほとんど意味をなさないほどのものしかなく、何らかのイデオロギーや政治的な立場にたたざるを得ないことを考えると、社会の一般的利益という概念が先進国の自国の政策の正統化となってしまうのはある意味仕方ないことかもしれません。
国際法の立法過程に関しては後述がなされることになりますが、上のことを考えると国際法はどのような視点から制定されるべきか。自国の利益のみを追求することだけに終始するなど論外だと思いますが、国家であれば一定の共通性の元に憲法を制定し法主体を縛り付けるということも可能ですが、価値観の違う国々が集まった国際法という場では何を基準にしなければならないか。

posted by きょうよくん at 16:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 法律 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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